moana People vol.14
湘南で自分らしく輝いている方に、様々な活動のお話しとご自身が感じる湘南の魅力を伺っていく『moana People』。
第14回は産婦人科専属セラピストの平田ゆかりさんにセラピストとしてのお仕事について、また二人のお子さんを育てあげた先輩ママが彼女のベビーマッサージ教室に訪れる新米ママ達に伝えている子育てのポイントなどを伺っていきます。
平田ゆかりさん
産婦人科専属セラピスト。逗子の八尾産婦人科、丸山産婦人科にて産後ママ達のケアにセラピストとして従事。病院以外でも葉山のNPO法人葉山っ子すくすくパラダイスなどでセラピストとして産前・産後ママのマッサージを担当する二児の母。英国IFPA認定アロマセラピスト、マタニティタッチ®プラクティショナー。
子育て中に出会ったアロマセラピー
――平田さんがアロマセラピーの世界へのドアを叩いたきっかけは?
平田さん:長男が直ぐに風邪をひく子でしょっちゅう発熱し、風邪が治ったと思っても咳をしていることが多く、「これは空気が汚ないから?」と思うようになって。当時私達家族は香港で暮らしていて、あの頃の香港は、とても空気が綺麗とは言えない環境でした。
そんな時、たまたま日本から送られてきた女性誌に「アロマセラピー」を特集する記事がありました。文中には「空気を浄化する」と書かれていて興味を覚えました。
「空気をきれいにできるならば、子供の風邪や咳も治るかな」と思い、香港でアロマセラピーを教えてくれるスクールを探し行ってみることに。
アロマセラピーで使用するのは、様々な方法で草花から抽出される“精油”と呼ばれるエッセンス。どれも個性的で良い香りでした。種類も豊富でそれぞれ香りもカラダやココロへの作用も異なると知りました。私はアロマセラピーの世界に夢中になり、子育ての息抜きにもなるので毎回スクールに通うのが楽しみに。自宅では習ってきたことを実践し、アロマ生活がスタートしました。
次男を妊娠した頃にふと思ったことが。「息子の風邪や咳は治っていないけど、私の心は軽くなっている」と。アロマセラピーで病気の改善はあまりなかったけど、気持ちへの作用はかなり効果的だと。アロマセラピーを始める前の私は、病気がちな息子を抱えながらの海外生活にココロもカラダも疲れていたせいか、イライラしたり不安に思うことも多かったのですが、アロマセラピーに出会ってからは、心がとても穏やかになり、育児へのストレスもかなり軽減していました。一度の流産、そして次男が生まれてからの育児は、アロマ生活の中で行っていたせいか楽になった気がします。
――平田さんは香港から帰国後に日本でアロマセラピーの勉強を続ける一環で、資格を取得したそうですが、その後なぜ産婦人科専属セラピストになろうと思ったのですか?
平田さん:私は自宅でサロンをしていて、同時に以前から興味があったマタニティーの勉強を始めたのですが、たまたまご縁があった逗子の池川クリニックで色々先生とお話をしているなかで、「うちでは施術が出来ないけど、チラシを作ってくれたら、医院の資料に入れてあげるよ」と言って下さったのがマタニティセラピストの始まりでした。
その後何度か池川クリニックでお客様の出産に立ち会った経験も今の私を後押ししていると思います。
香港の先生が元々イギリスの病院で従事していたIFPAアロマセラピストだったので、医療機関での話をして下さいました。また香港での孤独な子育て経験から、産後ママさんへのケアの必要性を強く感じましたし、マタニティタッチ®の内容も実践的だったので、お産の近くで活動するセラピストになりたいと思うようになりました。
育児は妊娠・出産と同時に始まります。産後0日からお産の現場でのママさんへのケアが、その後の育児に繋がると信じていましたから。
産婦人科で行うベビーマッサージの目的とは?
――産婦人科専属セラピストのお仕事とはどのようなものですか?
平田さん:医院と直接契約で、医師の指示により医院の患者様のお部屋に伺い出産後入院時にアロマトリートメントをする仕事です。脚へのリクエストが多いのですが、肩や腕、背中を希望される方にもお応えしています。
現在は逗子の丸山産婦人科で行っておりますが、今年6月に分娩の取り扱いを辞めてしまうまでは、同じく逗子の八尾産婦人科にて産後ママさんへのトリートメントを行っていました。
私達は助産師さんのように子宮口の開きを測って出産時期を計算することも看護も出来ないので、セラピーは医療現場に必須ではないのですが、幸い八尾産婦人科では先生方の理解も得られて、スタッフの一員としていただきました。医院全体で患者さんの産後の回復に心を寄せていたと思います。
いま八尾産婦人科では、ベビーマッサージのクラスを担当しています。
月に2回、第2・第4水曜日、10:00~12:00のクラスです(詳しいスケジュールは八尾産婦人科のWEBサイトでご確認ください)。お値段は一回1,000円(八尾産婦人科に通院歴がある方は500円)です。気軽に体験していただけると嬉しいです。
――ベビーマッサージのクラスはどのようなことをするのですか?
平田さん:ママが自分のあかちゃんに行うマッサージです。私は着衣のままと裸で肌にオイルを塗布して足やお腹、背中をマッサージしていく手技をお教えしています。ベビーマッサージを八尾産婦人科で行う目的は、院長の意向もあり第一は産後ママさん達のメンタルヘルスケアです。
近年ワンオペ育児をされている方も多く、いきなりの子育て生活にギャップを感じ産後うつに陥ってしまう人が増えています。また、その大半が生後12ヵ月未満の乳児を抱えるママ達だと言われています。
実はベビーマッサージを最初に口にしたのは副院長の夕美先生で、私も「それはきっとママさん達の拠り所になる!」と思い、院長先生に相談したところ「地域のママさん達のお役に立てれば医院をどんどん使って」と、おっしゃってくださいました。
あかちゃんとの繋がりが深くなるベビーマッサージをお教えしながら、ママの不安な時に医院で寄り添って、みんなが笑顔になるといいなぁ……と、思っています。
――子育てに悩むママ達からのたくさんの相談を受けていると思いますが、アドバイスする上で気をつけていることはありますか?
平田さん:まずは、私のクラスでは「なんでもOK」です。赤ちゃんがどんなに泣いても遊んでも気にしないでと。それもその子の個性であり成長の過程だとお伝えしています。そして「思い通りにならないのが育児。また来月ね」と。泣くとクラスのみんなに迷惑をかけるから「行くのは辞めよう」と思わせない、ちょっとした言葉がけも大切です。産後のママは、私の経験上、赤ちゃんと2人きりでお家に居るより出来るだけ外出している方が、気持ち的に元気でいられるので、「今日が赤ちゃんと私の初外出です」と言われると、「ヨッシャ!!」と嬉しくなります。
また、ママ達は思いがけないこととか、本やネットには書いてあるけどうちの子は出来ないということに戸惑います。人それぞれ顔が違うように、その子のタイミングでその子らしくいられればいいと伝えています。「育児本に書いてあることがすべてではなく、答えは目の前にあるのよ」と。そのことを知ってもらい、自分の経験からお伝えできることを話し、前向きになれるお手伝いをしています。
産後10カ月のワーキングママに多い悩みが保育園問題。産後一年で復職が決まっているママさん達には「いまできるだけ密着していてね」とアドバイスしています。産後一年頃までママと密着していた赤ちゃんは心が安定するので、一概には言えませんが保育園や外の社会でも安定し馴染めているそうです。
私が思う子育てで一番重要なことは、どれだけ乳幼児期に親がその子に関わったかと言うこと。
子どもの行動や言動に親がたくさん“反応”することで、子どもの心に安心感が育まれます。
大きくなるにつれて、子どもを叱ることが段々と多くなります。そこで私は「ふわふわのお尻を感じて♡これ、反抗期で困ったときの特効薬になるから」と、クラスで毎回話しています(笑)。
ベビーマッサージを通じて双方が幸せを感じ、赤ちゃん期にまたそれ以降も“触れ合う時間”が“親子の絆”につながり、悩みながらも将来それぞれを後押しすることになったらいいなと、私自身の育児を反省しながら思います。
セラピストとして次に描く将来の青写真とは
――既に二人の息子さんを育てあげられたそうですが、湘南で子どもと遊ぶのにおススメの場所はありますか?
平田さん:逗子海岸と森戸海岸です。逗子海岸は冬になると桜貝が沢山採れるので愛犬のテディと一緒に良く貝殻広いに出かけました。
森戸海岸の岩場には、やどかりやフグ、いかの赤ちゃんが沢山いるので、海洋生物たちに沢山遊んでもらえますよ。また、流れてくるひじきを拾って家に帰って干したり、生のまま煮着けて食べたりも良くしました。
――最後に、平田さんの今の夢は?
平田さん:息子の1/2成人式の時、「僕の夢は〇〇になることだけど、ママの夢は?」と息子に聞かれた時に「ママの夢はアロマセラピストになることかな」と答えたことを思い出しました(笑)。
あれから十数年が経ち、今思い描く夢は逗子・葉山のママさん達が穏やかな育児生活を送れる街づくりに、セラピストとして手助けをすることです。
まずは生活圏内にある産婦人科、次に地元の子育て支援団体、そして地域の人々を市や町が包括してくれたら良いなと。
八尾産婦人科は今後も産科は続きますし、ベビーマッサージもあるので里帰り出産などのママに良いと思います。
丸山産婦人科は「逗子・葉山のママさん達のニーズがあるなら、そのアロマ施術をうちでやりましょう」と、入院環境をさらに高めました。両医院長は私が同時に二つの産婦人科に関わること、葉山っ子すくすくパラダイスの活動を理解し応援してくだっています。
逗子・葉山の街には、こんなにも懐の深い愛情溢れる産婦人科があります。
私はそんな街で、セラピストとしてママさん達の近くで働きながら赤ちゃん達のお尻に癒さていたら、楽しいだろうなと思います。
ライター:zion_mama
東京の某ラジオ局の広報職を経て、雑誌やフリーペーパーのライターに。鎌倉在住。音楽と美味しいごはんが大好き。子育て中のママ目線で、湘南の遊び方を提案していきます。