moana People vol.5
湘南で自分らしく輝いている方に、様々な活動のお話とご自身が感じる湘南の魅力を伺っていく『moanaPeople』。
第5回目となる今回は、不登校の生徒に多様な学びを提供する『自由創造ラボたんぽぽ』代表の米澤美法さん。
ご自身の過去の体験や子育て経験を通して、学校という場に馴染めない子どもたちに多様な学びの選択肢を届け、親御さんへのサポートも幅広く行う米澤さんへお話を伺いました。
米澤美法さん
- 一般社団法人 子育てこころケア湘南 子育てこころサポーター
- 特定非営利活動法人湘南パートナーズ心理教育総合研究所認定 心理支援カウンセラー
- 中学校介助員
- 藤沢市図書業務員
- 子育て支援員
- 不登校アドバイザー
- カフェたんぽぽ主催(不登校の親の会)
- 自由創造ラボたんぽぽ主催(不登校などのフリースペース)
不登校児童とその家族のサポートへの想い
――どのようなきっかけで、不登校を始めとした児童のケアを始めたのですか?
美法さん:自分は帰国子女であったこともあり、日本の学校になかなか馴染むことが出来なかったんです。それに加えて闘病もしていたので色々と大変なことも多かったですが、無事に卒業し出版社で働き始めました。
その後結婚・育児が始まったとき、学校で周りに馴染むことに苦労している自分の子どもを見て、昔の自分を思い出したんです。
グローバル化が進み日本でも多様な働き方や学び方が主流になってきた今、学校に馴染めず不登校になった子にこそチャンスがあると思っています。
学校ではまだ教えてくれない様々な分野に挑戦することで、不登校の時期が大切な学びの時間に変わる。そう確信し、この活動を始めました。
――自由創造ラボたんぽぽには、どんな活動がありますか?
美法さん:主に3つの活動で成り立っています。
『ラボたんぽぽ』では、週に一回子どもたちが集まって自由に過ごせる場を提供しています。外部から様々な分野の講師の方を呼び、子どもたちが「やってみたいこと」を見つけられるような場を作れるよう努めています。
『カフェたんぽぽ』では、毎月1度不登校のお子さまを持つ親御さんがカフェに集まり、同じ悩みを持つ方同士で情報交換をする場所を作っています。
『そとラボたんぽぽ』は年に数回開催しているアウトドアラボで、海や里山などの自然を満喫できます。
とても人気のラボなので、今後も力を入れて自然に触れることでの心の変化を子どもたちに感じ取ってほしいと思っています。
レールに沿った人生なんて存在しないんだと子どもたちに知ってほしい
――米澤さんは不登校の子どもたちとその親御さんにどんなメッセージを伝えていますか?
美法さん:まず、「レールに沿った人生」というのは存在しないんだということに気づいてもらいたいですね。
小中高大と通って、就職活動をして、定年まで働く。
これまでマジョリティだった「普通」と呼ばれる人生設計は、時代と共に多様な形に変化しているんです。
例えば、中学校3年間学校に行けなくても、その間に沢山の絵を練習しイラストレーターになった人もいる。
病気で学校を休みがちでも、プログラミングの業界で大成するような素質と能力を持っている人もいる。
「これが常識だと思うから」「周りはみんなそうだから」という固定観念で、子どもと親の間で適切なコミュニケーション・サポートが出来ないのはとても悲しいことなんです。
周りと比べず、自分だけの個性や能力をどんどん伸ばせばそれで生きていくことも出来る、子どもたちにも親御さんにもその事実を知ってほしいですね。
――米澤さんは講演会や外部講師を招いてのワークショップにも力を入れていらっしゃいますよね。
美法さん:はい。不登校や闘病生活など同じ境遇を経験し社会の第一線で活躍する人を招き、子どもたちとその親御さんに勇気を与えるメッセージと実体験を伝えて頂いています。
言葉ですべてを伝えるのはどうしても難しいんです。実際に不登校や闘病生活を乗り越えた方の生き方を肌で感じることで、自発的に自分の軸を持てるようになれば、それがあらゆることに挑戦するきっかけになると考えています。
斬新な発想で子どもたちの生きる原動力を引き出す取り組み
――ラボたんぽぽでは、「マインクラフト」をコミュニケーションツールとして取り入れていらっしゃいますよね。
『Minecraft』(マインクラフト)は、Notch(マルクス・ペルソン)と彼が設立した会社・Mojang ABの社員が開発したサンドボックスゲームである。サバイバル生活を楽しんだり、自由にブロックを配置し建築等を楽しむことができるコンピュータゲームである。日本では一般的に「マイクラ」と略される。
(マインクラフト公式サイト)
美法さん:はい、「マイクラ部」という活動をラボ内で行っています。
マインクラフトは非常に自由度が高いゲームで、子どもたちは協力してマインクラフト上で自由に建物を建築したり、街を作ったりすることができます。
実際に北欧ではマインクラフトが教育の一環として導入されており、友人とのコミュニケーションを通して社会性を育むことはもちろん、果てはプログラミングや空間認識能力のスキルにもつながる、有用性の高いゲームなんです。
ゲームの中でプログラミング及びコーディングを行ったり、化学実験まで出来てしまうんですよ。
驚いたのは、ラボたんぽぽでマインクラフトを多様な学びのひとつとして導入したところ、地方の様々な団体からもマインクラフト導入に関するお問い合わせが頂けたことですね。
より学びに特化した「Minecraft: Education Edition」と呼ばれるバージョンもあるので、今後日本の学校などでも活用が進むと考えています。
――仮想世界でやってみたいことに挑戦できる環境は、まさに近年の子どもたちが受けるテクノロジーの恩恵ですね。
美法さん:そうですね。マインクラフトに限らず、近年はコンピューターや撮影機材もどんどん安価で高性能になってきているので、不登校の子どもたちにはぜひその期間で一生もののスキルを手に入れてほしいと思っています。
学校という環境に馴染めなくても、世の中には勉強できることがたくさんあるということを知ってほしい。
自分の安心できる居場所として開放すると同時に、最新のテクノロジーに可能な限り触れることで、未来を担う熱い心の原動力を手に入れてほしいと思います。
――周りと違うことをしている、それをポジティブに活用して欲しいですね。最後に、今後の展望を聞かせてください。
美法さん:今後はよりプロジェクトの規模を大きくし、更に多くの講師の方をお迎えして地域社会や教育現場との連携を密に取っていきたいと考えています。
不登校の実態を知ってもらうために冊子(詳細はこちら)を発行しているほか、教育に関する講演会なども積極的に開催していきます。
私たちでサポートが間に合わない状態のお子さまがいらっしゃる場合には、信頼できる専門家や医療機関にお繋ぎすることもできますので、お子さまの不登校を始めとした相談は一人で悩まずにラボたんぽぽが力になれたらと思っています。
自由創造ラボたんぽぽ
クリスタルマジシャンMichelとして全国でイベント出演をこなす傍ら、故郷湘南の魅力を発信するライターとしても鎌倉江ノ島を行ったり来たり。自然と天然石とハンモックの上をこよなく愛する、マイペースな湘南ボーイ。