こどもに絵本の読み聞かせをしたほうがいいとは聞くけど、実際はどんないいことがあるの?
そんな思いを抱くママさん、パパさんも多いのではないでしょうか。
今回ママモアナでは、こどもへの本の読み聞かせについて注目。茅ヶ崎市内の小学校で読書活動指導協力者として活動する前田峰澄さんに、読み聞かせの大切さや本の選び方などをお聞きしてきました。
乳幼児を育てているママさんパパさんはもちろん、小学生のお子さんを持つ親御さんにも子育てに生かすことができるヒントがいっぱい!
ぜひ、最後までご覧くださいね。
※写真の本:ロバート・マックロスキー作(わたなべ しげお訳)『かもさん おとおり』福音館書店
前田峰澄さんプロフィール
2004年から茅ヶ崎市の読書活動指導協力者として活動。茅ヶ崎市内の小学校でこどもたちに本の読み聞かせや、読み聞かせボランティアに向けて講習などを行う。「茅ヶ崎図書館・こどもの本の会」の代表も務め、茅ヶ崎市立図書館の第2土曜日のおはなし会や「よんでネット」の選書など、こどもと本を結びつけるための活動に尽力されている。
※写真の本:ジーン・ジオン作、マーガレット・ブロイ・グレアム画(わたなべ しげお訳)『どろんこハリー』福音館書店
読み聞かせは、こどもと喜びや楽しみを共有すること
ーー絵本の読み聞かせをするメリットとは何でしょうか?
前田さん
本を読むようになると読解力が付く、国語の成績が上がると効果を期待されがちですが、私はそれよりも読み聞かせのメリットは、本を通じて親子で喜びや楽しさ、時には怖さや悲しさも一緒に共有できることだと思います。それがこどもの生きる力を育てることになるのです。
『読み聞かせは心の脳に届く(泰羅雅登著、くもん出版)』によると、こどもに読み聞かせをしている時、本を読む親の方は言葉からイメージをする力を司る前頭前野が反応するそうです。しかし、聞いているこどもたちは生きる意欲や喜怒哀楽を司る大脳辺縁系の方が強く反応するのだとか。喜怒哀楽の感情を育むことは「わが身をたくましく生かしていく」力にも関係するそうですから、読み聞かせは生きる力に働きかけることが科学的にも実証されているんですね。
また、読み聞かせを通して親子で喜怒哀楽の感情を共有することは、コミュニケーション力の基本となります。コミュニケーションは、他者の気持ちを理解しようとするところから始まります。そしてそれは、自分の感情を客観的に理解しコントロールする術を身に着けることにも繋がっていくのです。
ーー小学生になったら一人で読書をして欲しい。そんな親御さんも多いかと思います。
前田さん
文字が読めることと内容が理解できることは別のこと。私は10歳までは親が本を読んであげるのも「読書」だと思っています。今のこどもたちにとって本を読むことは、ゲームやYouTubeなど様々な娯楽の中で埋もれてしまいがちです。こどもに自ら本を読んでほしいと期待するだけではなく、読んであげる時間を作ってほしいですね。でも、本を読む親御さんがまずは楽しんでほしい。親子で楽しさを共有することで、こどもたちは「読書は楽しいから、今度は一人で読んでみようかな」という気持ちになるのです。
でも、忙しいお母さんが、一緒に楽しみながら本を読む時間を作るのは意外と難しいものです。気負わず週に1度でもよいのでたっぷり読んで一緒に楽しむ時間を作ってほしいと思います。私は、やるべきことに読み聞かせを組み入れてしまうのはお勧めしません。楽しさより義務感が強くなってしまいがちだからです。もちろん読む方のお母さんが楽しいと思えるなら毎日でも読んであげてくださいね。けれども、今日は無理という選択肢があってもいいし、1人でやろうと思わないことが大切。お父さんや周りの人に読んでもらったり、「茅ヶ崎市立図書館」などで行われているおはなし会に行ってみるのもおすすめです。
本選びに迷ったら、長く読み継がれてきた本を
ーー本の選び方がわからないという親御さんも多いかと思います。
前田さん
もし本選びに迷ったら、たくさんのこどもに支持され愛されている本を選ぶのが確実ですね。と言うと「書店に平積みになっている本ね」と思われがちですが、今のこどもだけでなく、昔のこどもから今までずっと支持され愛され続けてきた本のことです。
長く読み継がれてきた本には、やはりこどもに愛され続けるだけの力があります。初版年が古くても、今も印刷され続けている本なら、今のこどもたちにも愛され支持されている証です。本の最初または最後にある「奥付」に記載されている出版年や印刷部数は、長い間読まれ続けている本かどうかを知る指標になります。
※写真の本:左から、マリー・ホール・エッツ作(まさき るりこ訳)『もりのなか』福音館書店。ジーン・ジオン作、マーガレット・ブロイ・グレアム画(わたなべしげお訳)『どろんこハリー』福音館書店。モーリス・センダック作(じんぐう てるお訳)『かいじゅうたちのいるところ』冨山房。ルース・エインズワース 作、堀内誠一画(石井 桃子訳)『こすずめのぼうけん』福音館書店。ノルウェーの昔話、マーシャ・ブラウン画(せた ていじ訳)『三びきのやぎのがらがらどん』福音館書店。ウクライナ民話、エウゲーニー・M・ラチョフ画(うちだ りさこ訳)『てぶくろ』福音館書店
茅ヶ崎市立図書館の「よんでネット」を覗いてみるのもいいですね。また、茅ヶ崎市立図書館公式WEBサイト内の「保護者の方・こどもの読書に関わる方はこちら」には、「こどもと楽しむブックリスト」があります。その中の「おすすめ絵本リスト~集団への読み聞かせ~」には、あらすじや読むのにかかる時間なども掲載されているので、参考になると思います。
時にこどもは安易なシリーズ本にはまることもあります。大抵は、こどもの心が成長するとともにそのような本から卒業していきます。しかし、中にはなかなか卒業できないことも。その場合には卒業に足る成長に合った一冊に出会わせてあげるのも、大人の役目だと思います。
ーー絵本の読み方のコツを教えてください。
前田さん
親子で読み聞かせするなら、心を込めて読めばどんな読み方でもよいと思います。あえて言うなら、私たちは文字を読みますが、こどもたちは絵を読んでいます。本をめくった瞬間、こどもは隅々まで絵を観察していますので、こどもの様子をみながら読み始める方がいいでしょう。そして、絵本を読み終わったあとは最後の余韻を大切に。こどもは主人公になりきり本の世界にどっぷりと入り込んでいます。そこから戻って来るのに案外時間がかかるんですよ(笑)。すぐに感想を聞かないであげてくださいね。
幼児から小学生向け、読み聞かせにおすすめの本
ーーこどもの成長に合った本を選ぶのが大切とのことですが、前田さんのおすすめの絵本を教えてください。
前田さん
今日は私にとって思い出深い本を選んできました。未就学~1年生くらいまでのお子さんにおすすめの1冊が『もりのなか(マリー・ホール・エッツ作、まさきるりこ訳、福音館書店)』。こどもの遊びの大切さを気づかせてくれる本です。
モノクロで描かれたこちらの絵本は、「ぼく」が森の中でお散歩しているうちに、いろいろな動物たちと出会うというお話。1944年にアメリカで出版されて以来、今でも増刷されている名作です。絵本のゴールデンエイジは自分がまるまる主人公とイコールになれる5~6歳と言われていますが、これはまさにこどもが主人公になりきって楽しむことができる1冊です。最後にお父さんに肩車されているところも好きなページです。『またもりへ(マリー・ホール・エッツ作、まさきるりこ訳、福音館書店)』は、『もりのなか』の続編。こちらもおすすめです。
小学生低学年におすすめなのが『ペレのあたらしいふく(エルサ・ベスコフ作、おのでらゆりこ訳、福音館書店)』です。ペレがお手伝いをすることでいろいろな人に助けてもらい、新しい服を手に入れるまでの工程を描いた絵本。お手伝いが大好きな年ごろの低学年のお子さんを満足させてくれるでしょう。読み終わるといつもこどもたちがペレになりきって、得意そうな顔をしています。
作中にはこどもが初めて出会う言葉が出てきますが、聞かれない限り説明する必要はありません。わからない言葉があっても自分で意味を想像して先に進めるようになることが、ひとり読みへと繋がっていくのです。
中学年へのおすすめは『かもさん おとおり(ロバート・マックロスキー作、わたなべしげお訳、福音館書店)』。作者が実際にカモを家の中で飼い、その動きを観察して描いたというリアルな絵が特長です。
かもの夫婦が子育てに良い場所を探してお引越しをするというお話。その移動をおまわりさんが手助けし、パトカーまで出動!みんなでカモの親子の行進を助けてあげるお話に心が温まります。こちらはアメリカのボストンで本当にあったお話が素になっているそう。中学年のこどもになるとその点にも興味を持つようになります。少し長いお話ですが、よく聞いてくれますよ。
小学1年生以降のお子さんには、絵本だけではなく幼年童話もぜひ読んであげてほしいですね。絵本は絵が物語を助けてくれますが、文字だけのページが多い物語の本の場合はそういう訳にはいきません。文章から心情や背景を理解する、言葉で聞いて想像できることが必要。そのためには、字だけの本の読み聞かせが大切ですね。こどもがひとり読みをするためのステップアップになります。
おすすめは『愛蔵版おはなしのろうそく1エパミナンダス(東京こども図書館編集、東京こども図書館)』シリーズ(既刊12冊 続巻あり)。こちらは東京こども図書館の「おはなしの時間」で繰り返し語られてきた、こどもたちに人気の物語を集めた一冊です。怖いシーンも出てきますがこどもは絵がなければ、自分が耐えられる範囲でしか想像をしないので心配は無用です。
読み聞かせは、こどもに愛情を注ぐこと
ーー録音ではなく実際に読んであげることが大切なのですね。
前田さん
親が心をこめて声に出して本を読むとき、こどもはそこに親から注がれる愛情を感じ取っています。これは、機械から出る音声にはないものです。視覚優位になりがちな現在ですが、こどもにとって生の声を耳で聞くことはとても大切。生の声でたっぷり注がれた愛情は、こどもが困難に立ち向う勇気の源になります。そのことが分かるエピソードをご紹介しましょう。
ある女の子が、お母さんの不在時に突然初潮を迎えてしまいました。知識としては知っていたけど、女の子はとても不安に…。お母さんが帰宅した時、女の子の傍らには一冊の絵本が…。それは、小さいときにお母さんがよく読んでくれた絵本だったそうです。絵本を読むことでお母さんの声を思い出し、不安を乗り越えようとしていたんでしょうね。やさしいお母さんの声と楽しかった読み聞かせの記憶にこどもが助けられることがあるんですね。絵本を見ながら、お母さんの愛情を感じていたのだと思います。
こどもに本を読んであげることは、愛情を注ぐこと。本を真ん中に、お子さんと一緒に楽しい時間を過ごしてくださいね。
『ハリネズミの本棚』ではこどものためのおはなし会を開催
今回前田さんにお話をお伺いした場所は、茅ヶ崎市松浪にある『ハリネズミの本棚』。こちらはシェア型の書店&図書室で、本棚のオーナーさんが選んだ本を買ったり借りたりすることができます。毎月のおはなし会やその他にもこども向けイベントを開催しています。イベントなどの詳細は公式Instagramをチェックしてくださいね!
ハリネズミの本棚
住所 〒253-0022 神奈川県茅ヶ崎市松浪2-9-27
アクセス 辻堂駅西口より徒歩15分
営業時間 13:00~17:30
定休日 月・火・水・祝日 ※最新情報はSNSをご覧ください
公式サイト https://hedgehog24book.wixsite.com/book
公式SNS https://www.instagram.com/harinezumi2024/
茅ヶ崎市ファーストプレゼント事業
『茅ヶ崎市ファーストプレゼント事業』は、お子さんの誕生を社会全体で祝福し子育てを応援する気持ちを込め、2万円相当のギフトカタログとしてお贈りする事業です。
※2023年4月1日以降にお子さんが生まれた、茅ヶ崎市在住のご家庭が対象
- 【Vol.12】新米ママ&パパたちへ。茅ヶ崎に暮らす先輩ママ・パパからの応援メッセージ
- 【Vol.10】ファミサポがもっと使いやすく!茅ヶ崎市で利用料の一部を助成
- 【Vol.9】赤ちゃんと一緒にお出かけしたい!茅ヶ崎の公園5選
- 【Vol.8】茅ヶ崎市立図書館を育児に活用!赤ちゃんから家族で、本に親しもう
- 【Vol.7】子育ての情報交換や、ママ友づくりに。茅ヶ崎市は子育てサロンが充実!
- 【Vol.6】子ども食堂はみんなの居場所。茅ヶ崎市のこども食堂支援事業がさらに充実!
- 【Vol.5】『茅ヶ崎市ファーストプレゼント事業』茅ヶ崎ゆかりのギフトをご紹介!
- 【Vol.4】働くママの悩み、先輩ママに聞いてみよう!茅ヶ崎市職員・ワーママ座談会
- 【Vol.3】産後の不安や育児の疑問、茅ヶ崎市子育て支援センターに相談しよう!
- 【Vol.2】茅ヶ崎市長インタビュー『茅ヶ崎市ファーストプレゼント事業』への想い
- 【Vol.1】みんなで子育てを応援!『茅ヶ崎市ファーストプレゼント事業』、いよいよ始動
夫の転勤であこがれの地、湘南へ。茅ヶ崎在住。湘南の太陽をいっぱい浴びて、美白とは縁遠い生活を満喫中。2023年に保育士資格を取得。湘南で子育てを楽しむヒントを、お母さん目線で提案していきます。